ご参加の皆様、ご支援いただきました方々のおかげをもちまして、盛況のうちに終了することができました。この場を借りて御礼申しあげます。
今回のご講演では、ICTを活用し、指導と評価の一体化を高める方法について、小学校体育の授業を例にお示しいただきました。以下、ご講演の概要をご報告いたします。
演題:ICTを活用した小学校体育(運動領域)の評価と日々の授業改善
宮田 幸治先生(長崎県長崎市小学校教育研究部会体育科研究部会)
評価について考える前に、教師の指導を充実させることが大切。指導充実のためには、授業づくりの計画が大切。授業づくりの出発点は、学習指導要領及び学習指導要領解説をよく読み、理解を深め、授業のイメージを膨らませること。
では、どのような授業を目指すのか?
・運動が苦手な子や意欲的でない子も楽しめる授業
・子どもが主体的に課題解決に取り組む授業
・子どもにやさしい授業
評価は、学習指導要領及び同解説から指導する事項を決定し、目標に準拠して行うものである。ここでの評価は絶対評価。学習指導要領及び同解説から、子どもがどのようなことができるようになればよいのかをひもとき、評価規準を設定する。ここで設定する評価規準は、目指す子どもの姿を具体的に表したものになる。
教師が指導したことを、子どもの変容から評価するのが原則であり、指導内容として示したことや、学習課題として設定し、指導したこと以外は評価できない。
例えば、これまで慣例としていた、「体操服を忘れたから、主体的に学びに向かう態度の評価はC」、「体育の見学が多いから評価はC」といったことや、50m走の記録や跳び箱の高さなどで単純に評価することがあるとしたら、見直す必要がある。
評価は以下の2つに分けられる。
1.次の指導に生かす評価(教師の指導の評価)
2.記録に残す評価(子どもの習得の状況・高まりを見る評価)
一単元において、単元の途中の「次の指導に生かす評価」と、単元終盤の「記録に残す評価」の2回の評価機会を設けることが望ましい。
単元の途中で、指導したことがどの程度身についているのかを評価し、その結果から授業改善を図る。そして、単元の終末に評価規準で示した姿の実現に結びつけていくことが極めて重要である。
知識・技能は見えやすいので、観察等で評価しやすい。しかし、思考力・判断力や主体的に学習に取り組む態度などは、見えにくい。こうした見えにくい力を「見える化」することが必要。そのために授業の最後に振り返りシートを書かせることがよく行われる。しかし、それをデータ化し分析するのは手間と時間がかかり、毎時間行うことは不可能。
そこで、振り返りシートの内容をGoogleフォームのアンケート形式に作りかえて、タッチ操作で入力させるようにした。
これにより、子どもたちの回答をリアルタイムで確認し、結果に応じて発問や説明などをして、学習のまとめにつなげることができるようになった。また、結果をスプレッドシートに書き出すこともできるため、データを蓄積し、個人ごとの変容を見ることもできる。単元の総括的評価が行いやすくなり、評価の効率化にもつながっている。
ICTを活用するにあたり、「指導と評価の計画」をしっかり立てることが必要。「何を」「いつ指導し」、学習を深める時間を確保し、「いつ評価する」のかを明確にして、指導と評価の計画を立てる。ICT活用については、適切な場面で適切に活用しなければ意味がないということを踏まえ、計画の中に、「いつ」「どのような意図で」使うのかを明記し、計画的に活用することが重要。
・何のためにICTを活用するのか、単元計画からしっかりと計画を立てておくこと
・機器を活用することが先行し過ぎて、本時に学ばせたいことが不明確にならないようにすること
を忘れないようにしたい。
体育授業で目指したいのは、歓声があがり、子どもがにこやかで、笑顔あふれる授業。その授業を起点として、子どもの運動やスポーツへの意欲を向上させ、体育の授業以外にも体を動かす機会を増やしていくという好循環を作り出すことだと考える。
この好循環の先には、「生涯にわたって多様に運動やスポーツに関わっていく人が育つ」未来がある。
今後も、先生方の‟今”を見つめ直すためのセミナーを開催してまいります。今後とも、『みらい授業フォーラム』の活動をご支援いただきますようお願い申しあげます。
『体育・保健体育ジャーナル 第16号』(学研教育みらい)
でご覧いただけます。