
学級全員の考えが電子黒板上で可視化される。遠隔の人たちとリモートで議論する。複数の学校の教員が協働でクラウド機能を使い市内の中学生の学習を支援する。いずれも最近拝見した授業の風景です。他にも学習の振り返りや学び直しへの活用や学習履歴の蓄積・分析など、一人一台端末による様々な試みは、多くの可能性を引き出し、教育そのものの形を変えることまで予感させます。
文部科学省はこのICTの効果的な活用例として、「観察や操作、実験などを通して、問題を見いだす」「数、式、図、表、グラフなどを作成して処理する」など5つの場面をあげています。教科書にも以下のような様々なコンテンツが見られます。
- 内容の意味や概念を視覚的に捉え、理解を深める。
- データ等を収集し、図やグラフに表す。
- 計算など基礎的内容を繰返し演習し、確認する。
- 関係や性質を発見・探究し、理由を考察する。
- 多様な考えや答えを基に、比較検討する。
- 問題を発展的に考察し、統合する。
- 解決過程や達成度を振り返り、評価改善する。
教科書では主に1から3が多く見受けられますが、4以降のものがさらに増えることも望まれます。知識の量だけでなく、知識の質まで求められるこれからは、数学の指導でも、今まで以上に、主体性、多様性、創造性、総合性の4つが鍵になります。複数の考えや方法を生かし、数学的に考え、判断し、最適なものを価値付けること、そこから新たな問いを生み出すなどの数学的活動が求められます。
描画ソフトを使って図形の性質を探究するもの、シミュレーションに基づき数学的に問題解決するものなど、問題を発見し、数学的に処理し、伝え合う活動を可能にするコンテンツや、生徒の理解に応じたサポートなどの充実が期待されます。
数学の指導では、豊かな数学的活動を通して、生徒一人一人の確かな理解を促すとともに、数学のよさを実感し、数学的な見方や考え方を育てることを目的とします。ICTはそのためのツールの一つです。この目的の実現には教員の指導力も一層求められます。普段の授業から、指導目標を達成するための工夫をしているか、多様な考えを生かしているか、考え合うことや表現することまで大切にしているか、生徒の理解度を把握し評価改善しているか、などが問われます。教科書にデジタルコンテンツがリンクされているから使うのではなく、その学習内容や活動、ICT活用がなぜ必要か、どんな意味があるのかを改めて考えることが必要です。一人一人が学んだことを振り返り、価値付けることも大切です。ICTをその良きパートナーにしたいものです。
ICTの活用については今後さらに検討が必要です。多くのデジタルコンテンツの中から、そのツールが生徒の思考とかみ合っているかを見極め、時にはツールを生徒に自由に選択させる、場面によってアナログを併用するなど教員の指導力が試されています。今後、生徒の理解を深める理論や実践を蓄積し、思考の高まりのある実践を共有することで、学校現場からボトムアップしていく必要もあります。